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日出ツル處の憲法

ニッポンの憲法比較サイト

五日市憲法(日本帝国憲法)

全文

 

※クリックで開閉します。

第一篇 国帝

第一章 帝位相続

 

第一条

 日本国の帝位は神武帝の正統たる今上帝の子裔に世伝す。その相続する順序は左の条款に従う。

 

第二条

 日本国の帝位は嫡皇子およびその男統に世伝し、その男統なきときは嫡衆子およびその男統に世伝し、その男統なきときは庶皇子およびその男統に世伝す。

 

第三条

 嫡皇子孫、庶皇子孫およびその男統なきときは国帝の兄弟およびその男統に世伝す。

 

第四条

 国帝の嫡庶子孫・兄弟およびその男統なきときは、国帝の伯叔父(上皇の兄弟)およびその男統に世伝す。

 

第五条

 国帝の嫡庶子孫・兄弟・伯叔父およびその男統なきときは、皇族中当世の国帝に最近の血縁ある男およびその男統をして帝位を襲受せしむ。

 

第六条

 皇族中男無きときは、皇族中当世の国帝に最近の女をして帝位を襲受せしむ。

 但し女帝の配偶は帝権に干与することを得ず。

 

第七条

 以上、承継の順序は総て長は幼に先だち、嫡は庶に先だち、卑族は尊族に先だつ。

 

第八条

 特殊の時機に逢い帝位相続の順次を超えて次の相続者を定むることを必要とするときは、国帝その方案を国会に出し、議員三分の二以上の可決あるを要す。

 

第九条

 帝室および皇族の歳費は国庫より相当にこれを供奉すべし。

 

第一〇条

 皇族は三世にして止む。四世以下は姓を賜うて人臣に列す。

 

第二章 摂政官

 

第一一条

 国帝は満十八歳をもって成年とす。

 

第一二条

 国帝は成年に至らざる間は摂政官を置くべし。

 

第一三条

 成年の国帝といえども政をみずからするあたわざる事故ありて、国会その事実を認めたる時は、その事故の存する間また摂政官を置くべし。

 

第一四条

 摂政官は国帝もしくは太政大臣これを皇族近親の中より指名し、国会の三分の二以上の可決を得ることを要す。

 

第一五条 成年の国帝その政をみずからするあたわざる場合において、国帝の相続者すでに満十五歳に至るときは摂政官に任す。この場合においては国帝もしくは太政大臣より国会に通知するに止めてその議に附するを要せず。

 

 

第一六条

 摂政官はその在官の間、名爵および儀仗に関するの外国帝の権利を受用するものとす。

 

第一七条

 摂政官は満二一歳以上の成年たるべし。

 

第三章 国帝の権利

 

第一八条

 国帝の身体は神聖にして侵すべからず。また責任とする所なし。万機の政事に関し国帝もし国民に対して過失あれば、執政大臣ひとりその責に任ず。

 

第一九条

 国帝は立法行政司法の三部を総轄す。

 

第二〇条

 国帝は執政官を任意に除任免黜し、また元老院の議官および裁判官を任命す。

 但し終身官は法律に定めたる場合を除くの外はこれを免ずることを得ず。

 

第二一条

 国帝は海陸軍を総督し、武官を拝除し、軍隊を整備して便宜にこれを派遣することを得。

 但しその昇級・免黜・退老は法律をもって定めたる例規に準じ国帝これを決す。

 

第二二条

 国帝は軍隊に号令しあえて国憲に悖戻する所業を助けしむることを得ず。

 且つ戦争なき時に際し臨時に兵隊を国中に備え置かんと欲せば、元老院民撰議院の承諾なくしては決してこれを行うべからざるものとす。

 

第二三条

 国帝は鋳銭の権を有す。貨幣条例は法律をもってこれを定む。

 但し通貨を製造改造し、またおのれの肖像を銭貨に鋳せしむることを得。

 

第二四条

 国帝は爵位・貴号を賜与し、且つ法律に依準して諸種の勲綬栄章を授け、また法律をもって限定する所の恩賜金を与うることを得。

 但し国庫よりしてこれに禄を賜い賞を給せらるるは、国会の可決を経るにあらざれば勅命を実行すべからず。

 

第二五条

 国帝はいずれの義務をも負うことなき外国の勲級を受くることを得。また国帝の承諾あれば皇族もこれを受くるを得。

 但しいずれの場合を論ぜず、帝臣は国帝の許允を経ずして外国の勲級・爵位・官職を受くることを得ず。

 

第二六条

 日本人は外国貴族の称号を受くることを得ず。

 

第二七条

 国帝は特命をもって既定宣告の刑事裁判を破毀し、いずれの裁判庁にもこれを移して覆審せしむるの権あり。

 

第二八条

 国帝は裁判官の断案により処決せられたる罪人の刑罰を軽減・赦免の恩典を行うことを得るの権を有す。

 

第二九条

 およそ重罪の刑に処せられ終身その公権を剥奪せられたる者に対し、法律に定めたる所により国会の議事に諮詢し、その可決を得て大赦・特赦および赦罪・復権の勅裁をなすことを得。

 

第三〇条

 国帝は全国の審判を督責し、およびこれを看守し、その決行を充分ならしめ、また公罪を犯す者あるときは国帝の名称をもってこれを追捕し求刑し所断す。

 

第三一条

 法司を訴告する者あるときは、国帝これを聴き、なお参議院の意見を問うて後にこれを停職することを得。

 

第三二条

 国帝は国会を催促徴喚し、およびこれを集開終閉し、またこれを延期す。

 

第三三条

 国帝は国益のために須要とする時は、会期の暇時において臨時に国会を召集することを得。

 

第三四条

 国帝は法律の議案を国会に出し、およびその他みずから適宜と思量する起議を国会に下附す。

 

第三五条

 国帝は国会に議せず特権をもって決定し、外国との諸般の国約をなす。

 但し国家の担保と国民に密附の関係(通商貿易の条約)をなすことに基ひするもの、または国財を費し、もしくは国疆所属地の局部を譲与変改するの条約、およびその修正は国会の承諾を得るにあらざればその効力を有せず。

 

第三六条

 国帝は開戦を宣し、和議を講じ、およびその他の交際・修好・同盟等の条約を準定す。

 但し即時にこれを国会の両院に通知すべし。且つ国家の利益安寧とあい密接すと思量する所のものを同じくこれを国会の両院に通照す。

 

第三七条

 国帝は外国事務を総摂す。外国派遣の使節・諸公使および領事を任免す。

 

第三八条

 国帝は国会より上奏したる起議を允否す。

 

第三九条

 国帝は国会の定案および判決を勅許制可し、これに鈴印〔鈐印〕し、および総べて立法全権に属する所の職務に就き、最終の裁決をなし、これに法律の力を与えて公布すべし。

 

第四〇条

 国帝は外国の兵隊の日本国に入ることを許すこと。また太子のために王位を辞することとの二条に就ては、特別の法律に依り国会の承諾を受けざれば、その効力を有せず。

 

第四一条

 国帝は国安の為に須要する時機においは、同時または別々に国会の両院を停止解散するの権を有す。

 但し該解散の布告と同時に四十日内に新議員を選挙し、および二ヶ月内に該議院の召集を命ずべし。

 

第二篇 公法

第四章 国民の権利

 

第四二条

 左に掲げる者を日本国民とす。

 一 およそ日本国内に生るる者。

 二 日本国外に生るとも日本国人を父母とする子女。

 三 帰化の免状を得たる外国人。

 但し帰化の外国人が享有すべきその権利は、法律別にこれを定む。

 

第四三条

 左に掲げる者は政権の受用を停閣す。

 一 外形の無能(廃疾の類)、心性の無能(狂癩・白痴の類)。

 二 禁獄もしくは配流の審判。

 但し期満れば政権剥奪の禁を解く。

 

第四四条

 左に掲げる者は日本国民の権利を失う。

 一 外国に帰化し外国の籍に入るもの。

 二 日本国帝の允許を経ずして外国政府より官職・爵位・称号、もしくは恩賜金を受くる者。

 

第四五条

 日本国民は各自の権利自由を達すべし。他より妨害すべからず。且つ国法これを保護すべし。

 

第四六条

 日本国民は国憲許す所の財産・智識ある者は国事政務に参与し、いずれか可否の発言をなし、いずれを議するの権を有す。

 

第四七条

 およそ日本国民は族籍・位階の別を問わず、法律上の前に対しては平等の権利たるべし。

 

第四八条

 およそ日本国民は日本全国において同一の法典を準用し、同一の保護を受くべし。地方および門閥もしくは一人一族に与うるの時権〔特権〕あることなし。

 

第四九条

 およそ日本国に在居する人民は内外国人を論ぜず、その身体・生命・財産・名誉を保固す。

 

第五〇条

 法律の条規はその効力を既往におよぼすことあるべからず。

 

第五一条

 およそ日本国民は法律を遵守するにおいては、万事に就き予め検閲を受くることなく自由にその思想・意見・論説・図絵を著述し、これを出板・版行し、あるいは公衆に対し講談・討論・演説し、もってこれを公にすることを得べし。

 但しその弊害を抑制するに須要なる処分を定めたるの法律に対してはその責罰を受任すべし。

 

第五二条

 およそ思想・自由の権を受用するにより犯す所の罪あるときは、法律に定めたる時機ならびに程式に循拠してその責を受くべし。著刻犯の軽重を定むるは法律に定めたる特例を除くの外は陪審官これを行う。

 

第五三条

 およそ日本国民は法律に拠るの外にあるいは強いてこれをなさしめられ、あるいは強いてこれを止めしめらるる等のことあるべからず。

 

第五四条

 およそ日本国民は集会の性質、あるいは数人連署、あるいは一個人の資格をもってするも法律に定めたる程式に循拠し皇帝・国会およびいずれの衙門に向ても直接に奏呈・請願また上書・建白するを得るの権を有す。

 但し該件によって牢獄に囚附せられ、あるいは刑罰に処せらるることあるべからず。もし政府の処置に関し、また国民相互の事に関しその他いずれにても自己の意に無理と思考することあれば、皇帝・国会いずれの衙門に向ても上書・建白・請願することを得べし。

 

第五五条

 およそ日本国民は華士族・平民を論ぜずその才徳・器能に応じ国家の文武官僚に拝就する同等の権利を有す。

 

第五六条

 およそ日本国民は何宗教たるを論ぜずこれを信仰するは各人の自由に任す。されども政府は何時にても国安を保し、および各宗派の間に平和を保存するに応当なる処分をなすことを得。

 但し国家の法律中に宗旨の性質を負わしむるものは国憲にあらざるものとす。

 

第五七条

 およそいずれの労作・工業・農耕といえども行儀・風俗に戻り国民の安寧もしくは健康を傷害するにあらざればこれを禁制することなし。

 

第五八条

 およそ日本国民は結社・集会の目的、もしくはその会社の使用する方法において国禁を犯し、もしくは国難を醸すべきの状なく、また戎器を携うるにあらずして平穏に結社・集会するの権を有す。

 但し法律は結社・集会の弊害を抑制するに須要なる処分を定む。

 

第五九条

 およそ日本国民の信書の秘密を侵すことを得ず。その信書を勾収するは現在の法律に依り法に適したる拿捕または探索の場合を除くの外、戦時もしくは法衙の断案によるにあらざればこれを行うことを得ず。

 

第六〇条

 およそ日本国民は法律に定めたる時機に際し法律に定示せる規程に循拠するにあらざれば、これを拘引・招喚・囚捕・禁獄あるいは強いてその住屋戸鎖を打開することを得ず。

 

第六一条

 およそ日本国民各自の住居は全国中いずかたにてもその人の自由なるべし。しかして他よりこれを侵すべからず。もし家主の承允なく、あるいは家内より招き呼ぶことなく、また火災・水災等を防御するためにあらずして夜間、人家に侵し入ることを得ず。

 

第六二条

 およそ日本国民は財産所有の権を保固にす。如何なる場合といえども財産を没収せらるることなし。公規に依りその公益たるを証するも掲示時に応じずる至当なる前価の賠償を得るの後にあらざれば、いずれか財産を買上らるることなかるべし。

 

第六三条

 およそ日本国民は国会において決定し国帝の許可あるにあらざれば、決して租税を賦課せらるることなかるべし。

 

第六四条

 およそ日本国民は当該の裁判官もしくは裁判所にあらざれは、縦令・既定の刑法に依り、またその法律に依て定むる所の規程にしたがうも、これを糺治・裁審することを得ず。

 

第六五条

 法律の正条に明示せる所にあらざれば甲乙の別を論ぜず拘引・逮捕・糺弾・処刑を被ることなし。且つ一たび処断を得たる事件につき、再次の糺弾を受くべからず。

 

第六六条

 およそ日本国民は法律に掲げる場合を除くの外これを拿捕することを得ず。また拿捕する場合においては裁判官みずから署名したる文書をもってその理由と劾告者と証人の名を被告者に告知すべし。

 

第六七条

 総て拿捕したる者は二十四時間内に裁判官の前に出すことを要す。拿捕したる者を直に放逐することあたわざる際においては裁判官よりその理由を明記したる宣告状をもって該犯を禁錮すべし。右の宣告はつとめて所能的迅速を要し、遅くも三日間内にこれを行うべし。

 但し裁判官の居住とあい隣接する府邑村落の地において拿捕するときは、その時より二十四時間内にこれを告知すべし。もし裁判官の居住より遠隔する地において拿捕するときは、その距離遠近に準じ法律に定めたる当応の期限内にこれを告知すべし。

 

第六八条

 右の宣告状を受けたる者の求めにより裁判官の宣告したる事件を遅滞なく控訴し、また上告することを得べし。

 

第六九条

 一般犯罪の場合において法律に定むる所の保釈を受くるの権を有す。

 

第七〇条

 何人も正当の裁判官より阻隔せらるることなし。これゆえに臨時裁判所を設立することを得べからず。

 

第七一条

 国事犯のために死刑を宣告さるることなかるべし。

 

第七二条

 およそそ法に違うて命令し、また放免を怠りたる拿捕は政府よりその損害を被りたる者に償金を払うべし。

 

第七三条

 およそ日本国民は何人に論なく、法式の徴募にあたり兵器を擁して海陸の軍伍に入り、日本国のために防護すべし。

 

第七四条

 またその所有財産に比率して、国家の負任(公費租税)を助くるの責を免るべからず。皇族といえども税を除免せらるることを得べからず。

 

第七五条

 国債・公債は一般の国民たる者、負担の責を免るべからず。

 

第七六条

 子弟の教育において、その学科および教授は自由なる者とす。しかれども子弟小学の教育は父兄たる者の免るべからざる責任とす。

 

第七七条

 府県令は特別の国法をもってその綱領を制定せらるべし。府県の自治は各地の風俗・習例によるものなるがゆえに、必らずこれに干渉・妨害すべからず。その権域は国会といえどもこれを侵すべからざるものとす。

 

第三篇 立法権

第五章 民撰議院

 

第七八条

 民撰議院は選挙会法律に依り定めたる規程にしたがい選挙において直接投籤法をもって単選したる代民議院をもってなる。

 但し人口二万人につき一員を出すべし。

 

第七九条

 代民議員の任期三ヶ年とし、二ヶ年毎にその半数を改選すべし。

 但し幾任期も重選せらるることを得。

 

第八〇条

 日本国民にして俗籍に入り(神官・僧侶・教導職 耶蘇宣教師にあらざる者にして)政権・民権を享有する満三十歳以上の男子にして、定額の財産を所有し、私有地より生ずる歳入あることを証明し、選挙法に定めたる金額の直税をいるる文武の常職を帯びさる者は選挙法に遵いて議員に選挙せらるるを得。

 

第八一条

 およそこれに掲げたる分限と要款とを備具する日本国民は、被選挙人の半数はその区内に限り、その他の半数はいずれの県の区にも通じて選任せらるることを得。

 但し元老院の議官を兼任することを得ず。

 

第八二条

 代民議員は(選挙せられたる地方の総代にあらず)日本全国民の総代人なり。ゆえに選挙人の教令を受くるを要せず。

 

第八三条

 婦女・未成年者・治産の禁を受けたる者、白痴・痕廟の者、住居なくして人の奴僕・雇傭たる者、政府の助成金を受くる者、および常事犯罪をもって徒刑一ヶ年以上の実決の刑に処せられたる者、また稟告されたる失踪人は代民議員の選挙人たることを得ず。

 

第八四条

 民撰議院は日本帝国の財政(租税国債)に関する方案を起草するの特権を有す。

 

第八五条

 民撰議院は往時の施政上の検査および施政上の弊害の改正をなすの権を有す。

 

第八六条

 民撰議院は行政官より出せる起議を討論し、また国帝の起議を改竄するの権を有す。

 

第八七条

 民撰議院は緊要なる調査に関し官吏ならびに人民を召喚するの権を有す。

 

第八八条

 民撰議院は政治上の非違ありと認めたる官吏(執政官 参議官)を上院に提喚、弾劾する特権を有す。

 

第八九条

 民撰議院は議員の身上に関し左の事項を処断するの権を有す。

 一 議員民撰議院の命令・規則もしくは特権に違背する者。

 二 議員選挙に関する訴訟。

 

第九〇条

 民撰議院はその正副議長を議員中より選挙して国帝の制可を請うべし。

 

第九一条

 民撰議院の議員は院中においてなしたる討論・演説のために裁判に訴告を受くることなし。

 

第九二条

 代民議員は会期中および会期前後二十日間、民事訴訟を受くることあるも答弁するを要せず。

 但し民撰議院の承認を得るときはこの限りにあらず。

 

第九三条

 民撰議院の代民議員は現行犯罪にあらざれば下院の前許承認を得ずして会期中および会期の前後二十日間、拘致・囚捕・審判せらるることなし。

 但し現行犯罪の揚合においても拘致・囚捕あるいは会期をたつるの後、糺治または囚捕するにおいても、即時・至急に裁判所より代民議員を拿捕せしことを民撰議院に通知し、該院をしてその件を照査してこれを処分せしむべし。

 

第九四条

 民撰議院は請求して会期中および会期の前後二〇日間、議員の治罪・拘引を停止せしむるの権を有す。

 

第九五条

 民撰議院の議長は院中の官員(書記等その他)を任免するの権あり。

 

第九六条

 代民議員は会期の間、旧議員任期の最終会議に定めたる金給を受くべし。また特別の決議をもって往返の旅費を受くべし。

 

第六章 元老議院

 

第九七条

 元老院は国帝の特権をもって命ずる所の議官四十名をもってなる。

 但し民撰議院の議員を兼任するを得ず。

 

第九八条

 満三十五歳以上にして左の部に列する性格を具うる日本人に限り、元老院の議官たることを得ベし。

 一 民撰議院の議長。

 二 民撰議員に選ばれたること三回におよべる者。

 三 執政官・諸省卿。

 四 参議官。

 五 三等官以上に任ぜられし者。

 六 日本国の皇族・華族。

 七 海陸軍の大中少将。

 八 特命全権大使および公使。

 九 大審院上等裁判所の議長および裁判官。またその大検事。

 十 地方長官。

 十一 勲功ある者および材徳・輿望ある者。

 

第九九条

 元老院の議官は国帝の特命によりて議員中よりこれを任ず。

 

第一〇〇条

 元老院の議官は終身在職するものとす。

 

第一〇一条

 元老院の議官は一ヶ年三万円に過ぎざる一身の俸給を得ベし。

 

第一〇二条

 皇子および太子の男子は満二十五歳に至り文武の常職を帯びざる者は元老院の議官に任ずることを得。

 

第一〇三条

 諸租税の賦課を許諾することはまず民撰議院においてこれを取扱い、元老院は唯その事あるごとに民撰議院の議決案を覆議してこれを決定するか、もしくは抛棄するかの外に出でず決してこれを変改することを得べからず。

 

第一〇四条

 元老院の編制および権利に関する法律はまずこれを元老院に持出さざるを得ず。民撰議院は唯これを採用するか棄擲するに過ぎず決してこれを刪添すべからず。

 

第一〇五条

 元老院は立法権を受用するの外、左の三件をつかさどとる。

 一 民撰議院より提出・劾告せられたる執政大臣諸官吏の行政上の不当の事を審糺・裁判す。その劾告手続は法律別にこれを定む。

 二 国帝の身体もしくは権威に対し、または国安に対する重罪犯を法律に定めたる所にしたがい裁判す。

 三 法律に定めたる時機に際し、およびひその定めたる規程にしたがい元老院議官を裁判す。

 

第一〇六条

 元老院議官はその現行犯罪によりて拘捕せらるる時、または元老院の集会せざるときの外、あらかじめ元老院の決定・承認を経ずしてこれを糺治し、または拘致・囚捕せらるることなし。

 

第一〇七条

 いずれの場合たるを論ぜず議官を糺治し、もしくは囚捕する時は至急にこれを元老院に報知し、もって該院権限のところをなさしむ。

 

第七章 国会の職権

 

第一〇八条

 国家永続の秩序を確定国家の憲法を議定し、これを添刪・更改し千載不抜の三大制度を興廃する事を司る。

 

第一〇九条

 国会は国帝および立法権を有する元老院民撰議院をもってなる。

 

第一一〇条

 国会は総て公行し、公衆の傍聴を許す。

 但し国益のため、あるいは特異の時機に際し秘密会議を開くことを要すべきにおいては、議員十人以上の求めによって各院の議長、傍聴を禁止するを得。

 

第一一一条

 国会は総て日本国民を代理する者にして、国帝の制可をもつの外、総て法律を起草し、これを制定するの立法権を有す。

 

第一一二条

 国会は政府においてもし憲法、あるいは宗教、あるいは道徳、あるいは信教自由、あるいは各人の自由、あるいは法律上において諸民平等の遵奉財産所有権、あるいは原則に違背し、あるいは邦国の防御を傷害するが如きことあれば、勉めていずれか反対説を主張し、いずれか根元に遡りその公布を拒絶するの権を有す。

 

第一一三条

 国会の一部において否拒したる法案は、同時の集会において再び提出するを得ず。

 

第一一四条

 国会は公法および私法を整定すべし。即ち国家至要の建国制度、および根原法一般の私法、および民事訴訟法・海上法・礦坑法・山林法・刑法・治罪法・庶租税の徴収、および国財を料理するの原則を議定し、兵役の義務に関する原則、国財の歳出入予算表を規定す。

 

第一一五条

 国会は租税賦課の認許権、また工部に関して取立たる金額使用方を決し、また国債を募り国家の信任(紙幣公債証書発行)を使用するの認許権を有す。

 

第一一六条

 国会は行政全局(法律規則に違背せしか処置、そのやすきを得ざるや)を監督するの権を有す。

 

第一一七条

 国会議する所の法案は、その討議の際において国帝これを中止し、もしくは禁止することを得ず。

 

第一一八条

 国会(両院)共に規則を設け、その院事を処置するの権を有す。

 

第一一九条

 国会はその議決に依りて憲法の欠典を補充するの権、総て憲法に違背の所業はこれを矯正するの権、新法律および憲法変更の発議の権を有す。

 

第一二〇条

 国会は全国民のために法律の主旨を釈明すべし。

 

第一二一条

 国会は国帝・太子・摂政官もしくは摂政をして国憲および法律を遵守するの宣誓詞をのたまいしむ。

 

第一二二条

 国会は国憲に掲げたる時機において摂政を選挙し、その権域を指定し未成年なる国帝の太保を任命す。

 

第一二三条

 国会は民撰議院より論劾せられて元老院の裁判を受けたる執政の責罰を実行す。

 

第一二四条

 国会は内外の国債を募り起し国土の領地を典売し、あるいは疆域を変更し、府県を発立分合し、その他の行政区画を決定するの権を有す。

 

第一二五条

 国会は国家総歳入出を計算したる(予算表)を検視の上、同意の時はこれを認許す。

 

第一二六条

 国会は国事のために緊要なる時機に際し、政府の請に応じ議員に該特務を許認・指定す。

 

第一二七条

 国会は国帝そするときは、もしくは帝位を空うずるときは既往の施政を検査し、および施政上の弊害を改正す。

 

第一二八条

 国会は帝国もしくは港内に外国海陸軍兵の進入を允否す。

 

第一二九条

 国会は毎歳、政府の起議により平時もしくは臨時海陸軍兵を限定す。

 

第一三〇条

 国会は内外国債を還償するに適宜なる方法を議定す。

 

第一三一条

 国会は帝国に法律を施行するために必要なる行政の規則と行政の設立、およびその不全備を補う法を決定す。

 

第一三二条

 国会は政府官僚およびその俸給を改正設定し、もしくはこれを廃止す。

 

第一三三条

 国会は貨幣の斤量・価格・銘誌・模画・名称および度量衡の原位を定む。

 

第一三四条

 国会は外国との条約を議定す。

 

第一三五条

 国会は兵役義務執行の方法、およびその規則と期限とに関する事、なかんずく毎歳召募すべき徴兵員数の定数、および予備馬匹の賦課兵士の糧食・屯営の総則に関する事を議定す。

 

第一三六条

 政府の歳計予算表の規則および諸租税賦課の毎歳決議、政府の決算表ならびに会計管理成跡の検査、新公債・証券の発出、政府旧債の変面官地の売易・貸与・専売・ならび特権の法律、総て全国に通ずる会計諸般の事務を決定す。

 

第一三七条

 金銀銅貨および銀行証券の発出に関する事務の規則、税関・貿易・電線・駅逓・鉄道・航運のこと、その他全国通運の方法を議定す。

 

第一三八条

 証券の銀行工業の特準度量衡製造の模型記印の保護の法律を決定す。

 

第一三九条

 医薬の法律および伝染病・家畜・疫疾防護の法律を定む。

 

第八章 国会の開閉

 

第一四〇条

 国会は両議院共に必ず勅命をもって毎歳同時にこれを開くべし。

 

第一四一条

 国帝は国安のために須要とする時機においては両議院の議決を不認可し、その議会を中止し、紛議するにあたりては、その議員・議院に解散を命ずるの権を有す。しかれどもこの場合にあたりては、必らず四十日内に新議員を選挙せしめ、二ヶ月間内にこれを召集して再開すべし。

 

第一四二条

 国帝崩して国会の召集期に至るもなおこれを召集するものなき時は、国会みずから参集して開会することを得。

 

第一四三条

 国会は国帝の崩御に遭うも嗣帝より解散の命あるまでは解散せず定期の会議を続くることを得。

 

第一四四条

 国会の閉期にあたりて次期の国会いまだ開かざるの間に国帝崩御することあるときは、議員みずから参集して国会を開くことを得、もし嗣帝より解散の命あるにあらずれば定期の会議を続くることを得。

 

第一四五条

 議員の選挙すでにおわりいまだ国会を開かざるの間において国帝の崩御に遭うてなおこれを開くものなきときは、その議員みずから参集してこれを開くことを得。もし嗣帝より解散の命あるにあらざれば定期の会議を続くることを得。

 

第一四六条

 国会の議員その年限すでに尽きて次期の議員いまだ選挙せられざる間に国帝崩御するときは、前期の議員集会して一期の会を開くことを得。

 

第一四七条

 各議院の集会は同時にすべし。もしその一院集会して他の一院集会せざるときは国会の権利を有せず。

 但し糾弾裁判のために元老院を開くはその法庭の資格たるをもってこの限にあらず。

 

第一四八条

 各議院議員の出席過半数に至らざれば会議を開くことを得ず。

 

第九章 国憲の改正

 

第一四九条

 国の憲法を改正するは特別会議においてすべし。

 

第一五〇条

 両議院の議員三分の二の議決を経て国帝これを允可するにあらざれば特別会を召集することを得ず。特別会議員の召集および選挙の方法はすべて国会に同じ。

 

第一五一条

 特別会を召集するときは民撰議院は散会するものとす。

 

第一五二条

 特別会は元老院の議員および国憲改正のために選挙せられたる人民の代民議員よりなる。

 

第一五三条

 特別に選挙せられたる代民議員三分の二以上、および元老院議員三分二以上の議決を経て国帝これを允可するにあらざれば憲法を改正することを得ず。

 

第一五四条

 その特に召集を要する事務おわるときは特別会みずから解散するものとす。

 

第一五五条

 特別会解散するときは前に召集せられたる国会はその定期の職務に復すべし。

 

第一五六条

 憲法にあらざる総ての法律は両議院出席の議員過半数をもってこれを決定す。

 

第四篇 行政権

第十章 行政権

 

第一五七条

 国帝は行政官を総督す。

 

第一五八条

 行政官は太政大臣・各省長官をもってなる。

 

第一五九条

 行政官は合して内閣をなし、もって政務を議し、分れて諸省長官となり、もって当該の事務を理す。

 

第一六〇条

 諸般の布告は太政大臣の名を署し、当該の諸省長官これに副署す。

 

第一六一条

 太政大臣は大蔵卿を兼任すべし。

 

第一六二条

 太政大臣は国帝に奏し内務以下、諸省の長官を任免するの権あり。

 

第一六三条

 諸省長官の序、次左の如し。 大蔵卿 内務卿 外務卿 司法卿 陸軍卿 海軍卿 工部卿 宮内卿 開拓卿 教部卿 文部卿 農商務卿

 

第一六四条

 行政官は国帝の欽命を奉じて政務を執行するものとす。

 

第一六五条

 行政官は執行する所の政務に関し、議院に対してその責に任ずるものとす。もしその政務に就き議院の信を失する時はその職を辞すべし。

 

第一六六条

 行政官は諸般の法案を草し、議院に提出するを得。

 

第一六七条

 行政官は両議院の議員を兼任するを得。

 

第一六八条

 行政官は毎歳国費に関する議案を草し、これを議院の議に付すべし。

 

第一六九条

 行政官は毎歳国費決算書を製し、これを議院に報告すべし。

 

第五篇 司法権

第十一章 司法権

 

第一七〇条

 司法権は国帝これを総括す。

 

第一七一条

 司法権は不覇・独立にして法典に定むる時機に際し、およびこれを定むる規程にしたがい民事ならびに刑事を審理するの裁判官・判事および陪審官これを執行す。

 

第一七二条

 大審院上等裁判所、下等裁判所等を置く。

 

第一七三条

 民法・商法・刑法・訴訟法・治罪法・山林法および司法官の構成は全国において同均とす。

 

第一七四条

 上等裁判所・下等裁判所の数、ならびにその種類、各裁判所の構成権任、その権任を執行すべき方法、および裁判官に属すべき権理等は法律これを定む。

 

第一七五条

 私有権および該権より生じたる権理・負債その他およそ民権に管する訴訟を審理するは特に司法権に属す。

 

第一七六条

 裁判所は上等下等に論なく廃改することを得ず。またその構制は法律によるにあらざれば変更すべからず。

 

第一七七条

 およそ裁判官は国帝より任じ、その判事は終身その職に任じ、陪審官は訴件事実を決判し、裁判官は法律を準擬し、諸裁判は所長の名をもってこれを決行・宣告す。

 

第一七八条

 郡裁判所を除くの外は国帝の任じたる裁判官の三年間在職したる者は、法律に定めたる場合の外はふたたびこれを転黜することを得ず。

 

第一七九条

 およそ裁判官、法律に違犯することあるときは各自その責に任ず。

 

第一八〇条

 およそ裁判官はみずから決行せらるベき罪犯の審判あるときをもってするの外、有期もしくは無期の時間その職をうばわるることなし。また司法官の決裁(裁判所議長もしくは上等裁判所の決裁等をいう)をもってせらるるか、または充分の緒由ありて国帝の令を下し、且つ憑拠を帯びて罪状ある裁判官を当該の裁判所に訴告する時の外は裁判官の職を停止することを得ず。

 

第一八一条

 軍事裁判および護卿兵裁判また法律をもってこれを定む。

 

第一八二条

 租税に関する争訟および違令の裁判も同じく法律をもってこれを定む。

 

第一八三条

 法律に定めたる場合を除くの外、審判を行うがために例外・非常の法衙を設くることを得ず。如何なる場合たりとも臨時もしくは特別の裁判所を開き、臨時もしくは特別の糺問掛りを組立、裁判官を命じて聴訟・断罪のことを行はしむべからず。

 

第一八四条

 現行犯罪を除くの外は当該部署官より発出したる命令書に依るにあらずして拿捕することを得ず。もしほしいままに拿捕することあれば、これを命令したる裁判官およびこれを請求したる者を法律に掲げる所の刑に処すべし。

 

第一八五条

 罰金および禁錮の刑に問うべき罪犯は、勾留することを得ず。

 

第一八六条

 裁判官は管轄内の訟獄を聴断せずしてこれを他の裁判所に移すことを得ず。これゆえをもって特別なる裁判所および専務の員を設くることを得ず。

 

第一八七条

 何人もその志意にもとり法律をもって定めたる正当判司・裁判官より阻隔せらるることなし。これゆえをもって臨時裁判所を設立することを得べからず。

 

第一八八条

 民事刑事において法律を施行するの権は、特に上下等裁利所に属す。しかれども上下等裁判所は審判および審判の決行を看守するの外、他の職掌を行うことを得ず。

 

第一八九条

 刑事においては証人を推問し、その他すべて劾告の後に係る訴訟手続の件は公行すべし。

 

第一九〇条

 法律は行政権と司法権との間に生ずることを得べき権限抵触の裁判を規定す。

 

第一九一条

 司法権は法律に定むる特例を除き、また政権に管する争訟を審理す。

 

第一九二条

 民事刑事となく裁判所の訟庭は(法律によって定めたる場合を除くの外は)法律において定むる所の規程にしたがい必ずこれを公行すべし。

 但し国安および風紀に関するにより法律をもって定めたる特例はこの限にあらず。

 

第一九三条

 およそ裁判はその理由を説明し訟庭を開いてこれを宣告すべし。刑事の裁判はその処断の拠憑する法律の条目を掲録すべし。

 

第一九四条

 国事犯のために死刑を宣告すべからず。その罪の事実は陪審官これを定むべし。

 

第一九五条

 およそ著述・出板の犯罪の軽重を定むるは、法律に定めたる特例の外は陪審官これを行う。

 

第一九六条

 およそ法律をもって定めたる重罪は陪審官その罪を決す。

 

第一九七条

 法律に定めたる場合を除くの外は何人を論ぜず拿捕の理由を掲示する判司の命令によるにあらざれば囚捕すべからず。

 

第一九八条

 法律は判司の命令の規式および罪人の臨時、もしくは特別の糺弾に従事すべき期限を定む。

 

第一九九条

 何人を論ぜず法律によってその職任ありと定めたる権をもってし、および法律に指定したる規程においてするの外は家主の意志に違いて家屋に侵入することを得ず。

 

第二〇〇条

 如何なる罪科ありとも犯罪者の財産を没収すべからず。

 

第二〇一条

 駅郵もしくはその他送運をつかさどる局舎に託する信書の秘密は、法律により定めたる揚合において判司より特殊の免許あるときを除くの外は必ずこれを侵すべからず。

 

第二〇二条

 保寨の建営土堤の築作・脩補のためにし、および伝染病その他緊急の情景に際し、前文に掲げる公布を必需とせざるべき時は一般の法律をもってこれを定む。

 

第二〇三条

 法律はあらかじめ公益のゆえをもって没収を要することを公布すべし。

 

第二〇四条

 公益の公布および没収の前給は戦時・火災・溢水に際し即時に没収することを緊要とするときはこれを要求することを得ず。しかれども決して没収を被りたる者は没収の償価を請求するの権を損害せず。

 

※参照の便を図り条文や章立てに通し番号を付していたりします。

 

参考

明治15・16(1882・1883)年頃

千葉卓三郎

 

五日市憲法草案とその評価