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憲法中綱領之議

憲法中綱領之議

 憲法起草仰せださるべき候につき、起草委員たる者、自己の意想を用いて一家の私議をまじえることなきのはずに候えども、大体の目的あらかじめ一定いたさず候ては、いたずらに架空の議を費し、あるいは主義を誤るに至るも難料かと、深く憂慮つかまつり候。それゆえ左の重大の条々まずもって聖衷より断ぜられ起草委員に下付せられ、その他の節目は右、根本の主義により起草候よう仰せいでしかるべきか奉り存じ候

 

綱領

第1条

 欽定憲法の体裁を用いらるること

 (欽定国約の差別は別紙をもって奏上すべし)

 

第2条

 漸進の主義を失わざること

 (付)欧州各国の成法を取捨するについては、自国の憲法もっとも漸進の主義に適すること

 (自国の最初に憲法を発するにあたって紛紜を生ぜし事跡は別に具上すべし)

 

第3条

 帝室の継嗣法は祖宗以来の模範に依り、あらたに憲法に記載するを要せざること

 

第4条

 聖上みずから陸海軍を統率し、外国に対し宣戦講和し、外国と条約を結び、貨幣を鋳造し、勲位を授与し、恩赦の典を行わせ賜うなどのこと

 

第5条

 聖上みずから大臣以下、文武の重官を採択進退し賜うこと

 (付)内閣宰臣たる者は、議員の内外にとらわらざること

 (内閣の組織は議院の左右する所に任せざるべし)

 

第6条

 大臣執政の責任は、根本の大政に係る者を除く外主管の事務につき各自の責に帰し連帯責任の法に依らざること

 (付)法律命令に主管の執政署名のこと

 

第7条

 立法の権を持たるるために元老院民撰議院を設けらるること

 

第8条

 元老院は特選議院と華士族中公選員とをもって組織すること

 

第9条

 民撰議院の選挙法は財産制限を用うべし。但し華士族は財産にかかわらざるの特許をかねうべきこと

 

第10条

 およそ議案は政府より発すること

 

第11条

 歳計の予算につき、政府と議院と叶い同を得ずして徴税期限前に議決を終らざるか、あるいは議院解散の場合にあたるか、または議院自ら退散するか、または議院の集会定めたる員数に満たずして決議を得ざるときは、政府は前年の予算に依り施行することを得ること

 

第12条

 一般人民の権利、各権各国の憲法を参酌す

 

参考

明治14(1881)年6月

岩倉具視(上奏)

井上毅(筆)

 

岩倉具視の憲法構想 | 史料にみる日本の近代