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日出ツル處の憲法

ニッポンの憲法比較サイト

帝号大日本国政典

全文

政典草案

一 元老院の条は昨年帰国中に起案せり

一 郡県政治の条は此冊に脱せり

 

※クリックで開閉します。

第一 帝国疆土

 

第一章

 現今帝国に附属する諸州諸島は即ち日本国の疆土たり。

 

第二章

 右日本国の疆界は、法律に由るに非れば〔解下に見るべし〕決して之を変革する事能はざるものとす。

 

第二 国民の権利及其義務

 

第三章

 日本国民たる本分を与奪するの規定は、法律を以て之を裁定すべし。

 

第四章

 日本国民の民位は、華族と平民に止るべし。

 且つ其両族の国民、銘〃随意の職業に就く事、以往自由たらしむべし。

 

第五章

 日本国疆土の固有主は、即ち闔国の人民にして、日本国民の本分を所有する者是なり。

 

第六章

 闔国の人民諸般の法律に対向するときは、更に門地の特格なく総て同等たるべし。

 且つ諸科の官務も亦世襲の旧癖を廃し、各自の器量に従って人民一統に之を奉職する事を得べし。

 

第七章

 住居移転の典則に従い、銘〃内国に於て其住処を転移する事、以往各自の随意に帰すべし。

 

第八章

 各人に固有する天賦の権利は保護あるべし。

 随って誰人たりとも、嘗て制度ある手続ならでは暴に訟庭に懲され、或は争訟中其意に戻り其利を矯めて訟庭を退けらるる事勿るべし。

 

第九章

 残賊盗窃と雖、現場に暴行する者ならでは敢えて私に収縛すべからず。

 且つ嫌疑の処行ある者と雖、制度の手続に照準し、裁判官の命令を得て始めて之を収縛すべし。

 

第十章

 懲治刑罰は刑典に依って公然之を裁決すべし。

 随って私に讐怨を報する事堅く禁止たるべし。

 且つ刑人の家産を没入する事、刑典の掲載せる例外に在ては今より之を廃止すべし。

 

第十一章

 訟曲を定奪し罪科を裁判する所局〔訟曲定奪所・罪科裁判所〕は、華族平民に対し斎しく同一たるべし。

 

第十二章

 事故に依り人民の住家に入て其室を捜促し家財を点験する事、唯に制度の手続を以て之を処すべし。

 否らざれは人民の居宅に乱入する事堅く禁止たり。

 

第十三章

 人民の固有物は決して掠奪する事あらざるべし。

 但し之を採って公用〔日本国の効用を云〕に給せざる事を得さるときは、相当の代償を償却して各人民の損失を補うべし。

 

第十四章

 両性〔男女両性を云〕配偶するときは婚姻の典則に照準し、事体を所長に通報し、其験査を経及結婚裁可の正証を収取し、始めて其式を行うべし。

 

第十五章

 華族平民の差別なく、総て日本人たる者は一夫同時に一婦に配し、一婦同時に一夫に配すべし。

 要するに正配ある者は別に倍配を保つ事を得ず。

 

第十六章

 華族と平民の間に婚姻を結ぶ事固より各自の随意に帰すべしと雖、女にして華族に生れ、長じて平民に嫁するときは、婚礼の日より已に華族の名称を失すべし〔但し皇族併に公族の家法を編み、以て冠位を尊重すべし〕。

 平民の処女華族に嫁するときは反之。

 

第十七章

 皇族及公族を除くの外、縦令実子なき者と雖他人を取って養子となす事、今より堅く禁止たるべし。

 

第十八章

 諸種の宗教を感念信仰する事、各人民の随意たるべし。

 且宗教の異同は人民権利の多少及異同を誘起する事を得ず。

 

第十九章

 日本全国の幼男女は嘗て政府、道、県、群及村等より設置せる学校に入門し、普通教育の科目に従事せざる可らず。

 但し男女となく入門の期限は各己八歳の齢に在るべし。

 故に父及後見役たる者にして、其子及猶子〔後見せらるる幼孤の者を云〕の已に九歳に齢する者をして未た学校に入門せしめざる者あるときは、文部典則の定規に照準し、之に相当の懲罰を課すべし。

 

第二十章

 一人或は数人結合して私学校を設くる事自由たるべし。

 且つ幼男幼女は便宜に従って公或は私学校へ入門する事各〃其意に随ふ事を得べし。

 要するに学科を卒業するときは、公私学校の故を以て自他権利の差等を誘起する事勿る可し。

 

第二十一章

 公私学校の差別なく、教授の科目及其方法は可成的全国をして同一の方嚮に帰せしめざる可す。

 故に私学校を建設する者は、予め校内講習の規範を条列し、之を文部省に示し、其裁可を経て始めて講場を開く事を得べし。

 

第二十二章

 諸学校建立及修復等の費用は文部典則に照準し、総て之を政府道県群及村より給すべし。

 但し某村貧究なるときは、諸般の雑費中一部は之を政府より給すべし。

 然れども貧人学校に在ては、政府啻に造築修復の雑費を給するのみならず、生徒も亦官費を以て修業せしむる事あるべし。

 

第二十三章

 公学校の教員たる者は、之を他の官員に準程し、政府より俸禄を給すべし。

 

第二十四章

 言語、書跡、板刻、及諸般の比賦等に依って各自の勘考を吐露する事、固より銘〃の随意たるべしと雖、之を仮って政府及他人を非放し、或は風俗を紊乱し、遂に一般の物情を挑撥し、人民をして危険の方嚮に誘導する者あるときは、刑典に照準し、之に相当の罪科を課すべし。

 

第二十五章

 新聞紙営業の者、日常目撃の雑事を板刻し、之を世に広告するときは、紙冊の初末に必ず其主幹の姓名を記載し、責任〔解第三、乙編に見るべし〕の証拠となすべし。

 学師書籍を板出するも亦然り。

 要するに著述訳者の姓名なき書冊を公売する事、堅く禁止たるべし。

 

第二十六章

 誰何を問わず総て日本国の民位に列する者は、一般に兵役を賦課せらるべし。

 但し勤務の規範及其時限の長短等は、改めて陸軍及海軍典則を定制するまで、姑く従前の通規たるべし。

 且つ士官兵卒たる者にして反戻犯罪するときは、兵部〔陸海軍部を云〕刑典に照準して之を懲治すべし。

 

第二十七章

 誰何を問わず総て日本国に住居する者は、租税の典則に従い、銘〃相当の租税を個納すべし。

 但し外国人居留地へ住居する欧米人は格外たるべし。

 外国交際官も亦然り。

 

第二十八章

 各省議院へ願書及訴訟書を出す事は、人民銘〃の自由に帰すべし。

 但し願書及訴訟書にして姓名を記せざるものは、各省及議院に於て一切之を採用せず。

 

第二十九章

 衆人武器を携へずして一宅一室に会同し、或は典則に戻らずして集会を起す事自由たるべし。

 但し街道及野外等に集会せんとするときは、三日前事体を警視局に告けて其許可を問うべし。

 

第三十章

 世勢平安の時に方ては、他人の書翰を披拆する事、官命と雖能する所に非ず。

 之に反し戦争の時間に限り、及訟庭より罪夫及罪科等を験治するの急に会するときは、典則の成規に照準し、諸種の私書翰は総て之を披拆する事あるべし。

 

第三 政務

 第三

 

第三十一章

 政規中百般の箇条は、即ち皇帝陛下と人民の間に於て一致協和して確定せる規程たるべし。

 依て皇帝陛下及諸官員の施行する事務にして事実政規の意趣に反せざるときは即ち君民一和せる処行と認了すべし。

 

第三十二章

 典則を制作する事は、素として皇帝陛下及議院の権利に帰すべしと雖、皇帝陛下は姑く典則を制作するの議論を決定すべき全権を維持し、議院は単に制作の討議に参与すべし。

 

第三十三章

 諸種の典則及臨時の布告書〔解下に見るべし〕は、皇帝陛下の御璽を経て始めて公通すべし。

 

第三十四章

 政規の定制に照準し行政事務を調理する権利は、全く皇帝陛下に帰すべし。

 

第三十五章

 訟曲を定奪し罪科を裁判する権利は、純然訟庭に帰すべし。

 

 第三 甲 皇帝の権利

 

第三十六章

 皇帝は不可譏不可傷の尊体なるべく其の諸卿たる者は毎に責任の心を体認すべし。

 〔諸卿過失あらんに議院より之を訴訟するときは、事実を明亮に疎条して免罪すべし。然れども処行果して超制し、疎条に言なきときは、終に免官にも至るべし。申稟とは、此等百般の関係を云なり〕

 

第三十七章

 典則を認可し布告するは、勿論皇帝陛下の権利たれども、事故に依って典則遵奉せられず、或は障碍せらるる事あるときは、皇帝陛下より臨時の布告を以て、必ず其徹底通行を期する事あるべし。

 但し縦令皇帝陛下の大命と雖、諸般臨時の布告書は少なくとも一省卿の加印を載するに非れば決して公通せざるべし〔段段に書くべし〕。

 省卿たる者は加印せるを以て、始て責任を負うべし。

 

第三十八章

 文武官員を黜陟し、及其位階を班する権利は、独り皇帝陛下に帰すべし〔別段に書すべし〕。

 但し別に典則あって其制を異にするものの如きは、此の章の例に非らず〔注:組住民より村郷長を選択する等の類〕。

 且つ皇帝陛下と雖一人をして、同時に文武両官を兼任せしむる事勿るべし〔但し海陸軍卿は武官より之を職すべし。反之武官たる者は文事行政の職を奉務する事能はざるの類なり〕。

 

第三十九章

 海陸軍元帥は皇帝たるべし。

 随って兵部一般の権利、特に和戦を判し味方条約を結ぶ等の事件は独り皇帝の威権たるべしと雖、他国と貿易の条約を結ぶも亦皇帝の全権に帰すべし。

 但し貿易の条約は他国と調印の後は、必ず公然全国に布告あるべし。

 且つ布告書の意趣と調印せる条約原文の意趣は、些少も齟齬ある可らず。

 

第四十章

 刑夫罪人の懲罸を減じ〔死一等を減じて流罪に当て、終身の堡城獄を減じて禁鑑数年に代うる等是なり〕、財貨調理を中絶する事〔罪夫を訟庭に徴し、其処行を吟味する時限中皇命項に其吟味を廃止せしむる事あり〕、亦た皇帝陛下の威権と雖各省卿過失あって訟庭已に其罪を裁判せしときは、皇帝陛下と雖嘗て訴訟せる議院の承諾認可なくんば、妄りに其罪を減却する事勿るべし。

 

第四十一章

 議院を開閉する事、全く皇帝陛下の威権に帰すべし。

 

第四十二章

 賞牌〔勤功ある文武官の胸部等に附貼する鉱族の表片なり〕及華族の名称を附与する事、独り皇帝陛下の威権たるべしと雖、華族をして別に特権を幾望せしむる事勿るべし。

 

第四十三章

 交際金銀〔所謂世間通用の金銀貨なり〕を制作する事、全く皇帝陛下の権利たるべし。

 

第四十四章

 毎歳皇帝陛下の必需せる金資は、典則を以てその其員数を定め、一般収納の租税中より之を俸給すべし。

 

第四十五章

 日本皇帝は、議員の承諾認可なくんば、同時に他国の帝王たる事得さるべし。

 

第四十六章

 日本皇帝の祚階は唯に神武皇統に止り、往〃男性特に至尊の長男たる者、世に旧業を襲く事を得べし。

 但し皇帝崩御して親宮[をじきみや]を世に遺さざるときは、各省卿及議官会議して新帝を四家の皇族より奉撰すべし。

 

第四十七章

 皇帝は尊齢十八歳〔二百十六ヶ月を云なり〕にして独立成男し、随って即位する事を得べし。

 但し某幼主尊齢十八歳に盈たざるときは、須く各省卿顧問員及議院より皇族一名を撰挙して至尊の後見役となすべし。

 但し後見役の世に在ては、政規の箇条一切変革あらざるべし。

 

第四十八章

 皇帝陛下祚階に昇るときは、須く議官を会し政規に則り典則に照準して政治する事を誓御あるべし。

 但し皇族にして後見役の位階に就くときは、亦た同前の誓詞あるべし。

 

第四十九章

 皇帝陛下崩御し或は疾病の患あって自ら政務を調理する事能はざるときは、皇太子祚階に昇る事固より論なし。

 然れども皇太子の尊齢未た十八歳に盈たざるときは、其後見役たる皇族より急に議官を会し、後見役に就くべき礼式を行うべし。

 

第五十章

 皇帝陛下及皇族并に幼少なるときは、各省卿議院と脇和して一般の政治を調理し、以て幼主の独立成男を待つべし。

 

第五十一章

 皇家の私有物〔皇家固有の山林土地金貨城楼等を云〕は、追って典則を以て定制すべし。

 △ 皇家私典〔は別に製作して奉献すべし〕

 

 第三 乙 諸卿の権利及其責任

 

第五十二章

 皇族及他国人にして未だ日本国の民位に列せざる者は、決して日本国の卿位に列する事を得ざるべし。

 

第五十三章

 各省卿たる者、行政の際其処置縦令過失あるに似たりと雖、議院より確実の事跡を証して皇帝陛下に訴訟するに非れば、世間の譏議妄りに一卿の官職を解く事能はざるべし

 

第五十四章

 各省卿責任の箇条及其過失あって訴訟せらるるときは、裁判の手続及懲治の方法等は別に典則を以て之を定制すべし。〔「第一訟庭及探題官より裁判せは如何?」〕

 

第五十五章

 各省卿疾患に悩み、或は公許旅行せしときは、大輔たる者姑く其名代たるべし。

 但し名代せる時限中行政典則に戻るときは、大輔たる者独り其責任に当るべし。

 

第五十六章

 各省卿たる者は同心脇力、皇帝をして政規に則り、典則に戻らずして万政を調理せしむる事、全く其職務たるべし。

 且つ諸卿中太政大臣、副大臣の官位あるべし。

 

 第三 丙 元老院

 

【欠落】

 

 第三 丁 議院の権利

 

第五十七章

 議官たる者は、日本人民の名代たるべし。其会議討論するものは、即ち皇帝独り政治を私せず、広く之を人民に忖度する所以なり。

 但し某議士、素と某州より撰択せらるると雖、議院に会集し政府に対向するときは、各〃広く日本人民を名代するの覚悟を存じ、狭く一州の私を顧る事勿るべし。

 

第五十八章

 撰択士の主務は、啻に諸般の典則を作為する議論に参与する事たるべしと雖、典則の草案を作為するは、政府議院両ながら其権利あるべし。

 且つ議院は毎歳政府の出納を験査する事を得べし。

 

第五十九章

 議官会場に列するときは、各自の勘考を吐露し、公然討論を放って忌憚なかるべし。

 且つ衆庶をして其議を公聴せしむべし。

 但し議長官たる者は事体の便宜に従い、会場を閉じて密議せしむるの権利あるべし。

 諸般の議論をして判決せしむるときは、議長官たる者先ず議士の可否を問い、其員数の多少を以て一決を判すべし。

 但し議院に於て某典則を草案し、或は某事件を精密に験査するときは、議員中より更に数名の委員を撰して事務を調理せしむる事を得べし。

 

第六十章

 議官は素として人民より撰択すべしと雖、暫く先ず皇帝陛下より府県の知事及令を以て其員に充つべし。

 但し公家二十九名は撰挙を待たずして、今より后永世議員に列すべし。

 故に現今の議院に亦出席する事を得べし。

 

第六十一章

 誰人たりとも、未だ日本国の民位に列せず、一歳間六十円の租税を出さず、年齢三十に盈たざる者は、決して議院の員数たる事能はず。

 且つ従前刑罰懲治等を蒙れる者も亦同前たるべし。

 

第六十二章

 議官始めて議院に登るときは、交互に其民位年齢及従前の行状等を質問し、随って議長官及議長次官を撰択し、以て事務の位置を立つべし。

 但し議長官及議長次官を撰択する権利は議院に帰すべしと雖、之を其官に任ずるは、威権全く皇帝陛下に在るべし。

 故に議員其長官を撰択するの初、長官次官の異別なく、よく其任に当るべき人物各〃三名を奏薦すべし。

 然れども皇帝陛下其三銘を鑑別して不当となさば、皇帝陛下より更に他人を撰んで其官を任すべし。

 

第六十三章

 知事及令一歳一次議院に出席すと雖、固より本官を保ち、閉院の日は帰県帰府して本職に就くべし。

 

第六十四章

 知事及令にして議員の職を免ぜらるるときは、皇帝陛下より其府其県に於て更に其次官を撰び、或は他の省使官員を以て其缺を補うべし。

 

第六十五章

 議士の会場は東京たるべく、且つ開院の定日は毎歳一回十月廿日を以て定規となし、五十日を経て閉院あるべし。

 但し開院及閉院の日は皇帝大広間に出御し、宜く当日の礼式を行御あるべし。

 事故あって皇帝親しく議院を開閉する事能はざるときは、皇子或は一卿尊慮を承け、須く当日の礼式を行うべし。

 

第六十六章

 卿及大輔にして過失あるときは、議院より先ず其責任を催促し、疎条靉或は罪科巳に判然たるときは、事実を証して皇帝陛下に訴訟すべし。

 且つ書籍を以て民間より卿及大輔の過失等を議院に訴訟するときは、議院其書を投じて卿及大輔に致し、以て其責任を催促すべし。

 但し民間より出せる百般の願書及訴訟書にして、独り一議員の姓名に当たるものは、敢て全院の承諾を期する事能さるべし。

 

第六十七章

 議官たる者へは、政府より東京と府県の間に往来すべき旅費及滞京間の費用を給すべしと雖、本官月給の外別に給俸あらざるべし。

 但し公家議員たる者は、月給旅費一切之を幾望する事能ず。

 

第六十八章

 議員たる者、開院五十日間は縦令一箇の超制〔限制を犯せる〕等ありと雖、妄りに収縛せられ或は訟庭に徴さるる事勿るべし。

 但し現場に暴行する者あるときは、決して此章の例に非ず。

 地方の章程及其政治〔此条別冊に見るべし〕

 

第六十九章【欠落】

 

 第三 戊 法度

 

第七十章

 公私訟曲〔公法及私法に関係する訟曲是なり〕を裁判するの事務は、一切訟庭に帰すべし。

 但し訟庭事務を調理するに当らば、一に典則を奉戴し、密に条理を分疎し決して自他の私情を顧る事勿るべし。

 訴訟定奪し罪科裁判せるときは、必ず典則の章句に証し、何故刑罰し何故懲治する等の原由を表し、且つ刑罸懲治等は総て皇帝の尊称を以て之を処すべし。

 

第七十一章

 訟庭は三等に班し、第一第二第三訟庭となし〔公私両庭を合併すべし〕、毎道一箇の第二訟庭を置き毎郡一箇の第一訟庭を置くべし。

 但し第三訟庭は、日本全国中東京に於て啻に一箇所を置くべし。

 兵部訟庭、商売訟庭、及其庭内の関係等は別に典則を以て定制すべし。

 

第七十二章

 定奪判決は公然訟庭の一場に会議して調理すべく、衆人も亦た其場に倍し、自ら事実を証する事を得べし。

 但し調理の事実放盪淫逸等に係り、随って臨場せる物情を挑撥するの戒あるときは、須く事体を公布し、一場を閉じて調理する事あるべし。

 

第七十三章

 定奪裁判を司る者を司法士と名(づ)け、皇帝より制度典則に明通せる者を撰んで其官に充たし、全権其事務を調理せしむべし。

 且つ司法士たる者は、一回任官するときは追次に超遷し、典則及訟庭の規範を犯すに非れば、終生を期し決して其官を罷らるる事勿るべし。

 司法士たる者は定奪裁判の事務を調理するに止り、決して自他の官職〔但し政府より俸禄を給すべき諸官職の総名〕を兼任する事能わざるべし。

 但し議士に撰択せらるる事件は此の章の例に非ず〔俸禄は本官の分依然たるべし〕。

 

第七十四章

 訟庭威権の限制及訟庭百般の規範は、別に典則を以て定制すべし。

 

第七十五章

 行政官と司法官の間に起れる争論等は、第五十四章の手続に従って裁判あるべし。

 

第七十六章

 司法士たる者、訟庭威権の限制を犯し、及其規範を破るときは、見聞せる者より直に之を訟庭に訴訟すべし。

 

第七十七章

 司法士たる者奉職・・・・年を経て死去せしときは、政府より訟庭の規範に従い、遺世の妻子へ見継金を給すべし。

 

第四 大蔵の章程

 

第七十八章

 百般の歳入歳出は、其未だ出入せざる以前、大蔵省に於て予め其員数を統算し、省卿より之を議院に示すべし。

 且つ政府毎歳の出資は、各年典則を以て其員数を定むべし。

 

第七十九章

 各省毎歳の出費は、略〃其出費すべき箇条を記載し、各省卿より之を議院に示すべし。

 且つ議院出費の箇条に疑惑するときは、省卿たる者公然其原由を験査せしめざる事能ざるべし。

 

第八十章

 非常の事故あって歳出当年の限制を踰ゆる事あるときは、追って議院開場するに方り、政府より其事実を明亮に証すべし。

 

第八十一章

 租税典則に記載する公賦の租税は、毎歳大蔵省より之を収納すべし。

 且つ新に租税を賦すべき事物出産するときは、更に公議を設け、論説一和するときは以て租税の典則となすべし。

 

第八十二章

 道県郡に在て毎歳の出納独り其管内に係るものと雖、探題知事代官たる者随意に道県及郡租税を賦して歳出を補ふ事能はず。

 要するに政治の間必要の出納は、管内各〃会議を設け、毎歳典則を以て其員数を制すべし。

 

第八十三章

 手数料〔訟庭裁判の手数料、符証調印の手数料、及外国行符証裁整の手数料等百般なり〕は、典則の定制に従って各局より之を収納すべし。

 

第八十四章

 国債及政府請合等の事件は、毎回典則を以て処置あるべし。

 

第八十五章

 新に世禄を給する事固より廃止たるべく、且つ誰か非常の勤功あって特に賞貨を与へざる事を得ざるときは、亦典則を製して処置すべし。

 

第五 官員の定制

 

第八十六章

 司法士に属せざる官員の黜陟、及妻子見継料等は、別に典則を以て其制を定むべし。

 要するに行政の官員と雖、其処行及方嚮を以て政府の意を害せざるときは、私情を以て妄りに其官を罷らるる事勿るべし。

 

第八十七章

 政規布告の前より已に官員に列する者は、官員典則中別に箇条を置き、其功を論賞すべし。

 

第八十八章

 各省使官員にして議員に撰択せらるる者は、期限中本官に現勤せずと雖〔司法士は本官に現勤する事を得べし〕、俸禄は従前の如くなるべし。

 

第六 一般の定制

 

第八十九章

 非常百般の事故一旦に迫り、議院会〃開場せざるときは、諸省一致の責任を以て臨機の布告を出し、典則の威力に代え、以て火急を救ふ事を得べしと雖、他日議院開場するときは、政府より事実を証して議院に通し、処置止むを得ざるに出し等を疎条あるべし。

 

第九十章

 典則及政府道県郡より出せる臨機の布告は、典則の式に従って披露あるべし。

 否らざれは決して公通す可らず。

 

第九十一章

 従来布告せる指令書は、其意趣政典の意趣に反せざるときは即ち典則となって公通すべし。

 

第九十二章

 従来奉職せる諸官員は、別に典則を以て其権利を限制し、及勤務の規範等を制するまで尚も旧例に依って勤務すべし。

 

第九十三章

 議員及諸官員たる者は、奉職の日忠信実義に勤務すべき誓詞を皇帝陛下に進呈すべし。

 

第九十四章

 戦争の時限に方ては、第八、第九、第十二、第十三、第廿四、第廿五、第廿九、及第三十章の定制を全く或は其一部、兵部典則の威権を以て暫時公通せしめざるべし。

 

第七 政典変革の定制

 

第九十五章

 政規中百般の定制は、追勢当時に適宜せざる事あるべし。

 然るときは政府及議院より其条目原由を挙て公議に決し、両院一和せるを以て其変革をなすべし。

 皇帝陛下は各省卿及議員の外其内閣に於て平常元老を集め、行政の際事件重大緊要に係るときは亦其員を徴して顧問する事を得べし。

 

別章 元老院

 

第九十六章

 元老官の義務は主として皇帝陛下を輔翼し、百事を政規典則に照準して、其顧問に奉対する事たるべし。

 然れども典則為作の会議に参じ、且つ行政の際各省卿政規に悖戻し、典則に違反する処行あるときは、之を督責するの権利あるべし。

 

第九十七章

 誰人を顧問員に命じ、尋ねて其位階を班し、及時宜に依り某員を抜いて某卿に任じ、或いは某卿に復職せしむる等、固より皇帝陛下の威権に帰すべしと雖、元老たる者は以往従前の功臣にして在職中位官勅任の顕栄を有し、且現に一歳間四百廿円の税を出す者に非れば、決して其員に列する事能はざるべし。

 

第九十八章

 元老たる者は、皇帝陛下より付与する官禄の外、別に月俸等を幾望する事能さるべし。

 

参考

千八百七十二年第八月一日(1872年8月1日)起草

青木周蔵

 

青木周蔵の憲法構想 | 史料にみる日本の近代